『環境経済学をつかむ』
扱う書籍
「環境経済学をつかむ」栗山・馬奈木(2016)
大学の春休みの課題図書です。これから本格的に環境経済学の世界に入っていく1冊目の本です。これからの投稿はアウトプットを文章にして自分の中で学びを定着させることを目的としています。早速unit1よりまとめていきます。
unitごとにまとめていくのは面倒だったのでunit1限定で投稿します!
要約
結論これからの社会に必要なのは「持続可能な発展」である。
1950年からの50年間で世界経済の発展は7倍以上までに増加し、先進国では豊かな生活を享受できるようになった。大量消費・大量生産社会は、商品の価格を低下させ、多くの一般市民の生活水準の向上に貢献したわけである。他方で深刻な環境問題の原因となっているのである。
?どれくらい深刻なのか
ローマクラブが1972年に出版した『成長の限界』は、資源の枯渇や環境汚染によって経済成長は限界点に到達するであろうと警告した。このままの経済成長を続けていくと以下で示すグラフのように暗い未来が待っているのかもしれない。
?暗い未来って定量的に言うと
もったいない学会 http://shiftm.jp/?p=888
『成長の限界』ってぐぐったらめっちゃグラフでてくるやん。読もう。
一方で『成長の限界』のシナリオに対する反論もいくつかある。
- 技術進歩によって生産性が向上していることから急激に資源が枯渇するとは限らない
- 市場メカニズムによる価格調整機能が考慮されていない(例えば石油が枯渇しそうになり生産量が減少したとすると石油価格は高騰する。すると消費者は大体行動として省エネ自動車を選ぶようになる。)
- 政府が排出量を規制することで被害を食い止めることが出来る
- 所得水準が高い人々の環境問題に対する関心が高まることで、環境を守る政策が導入される
?②実際に代替行動はどれくらい取られているの
?④って本当かな
以上の理由により、環境汚染は次第に緩和されていく可能性がある。
ここで重要なのが経済成長と環境保全が両立するのかという点である。
環境クズネッツ曲線は『成長の限界』の将来像とは全く異なり、経済成長と環境保全が両立することを意味している。
以下のグラフを見ると分かるように、所得水準と環境汚染の間には<逆U字型>の関係性があると提起しており、言い換えるならば経済成長の初期段階においては環境汚染が増大するけれども、ある所得水準を境に徐々に減少していくのです。
二つの理論どちらが正しいかは様々な研究がなされているが、環境クズネッツ曲線の臨界点を迎えることなく、最終的に『成長の限界』が描くように温暖化の被害によって経済が壊滅的な被害を受けるということもある。
よって初めにも述べたとおり、環境問題を解決するためには、現代世代だけでなく、将来世代のことも考慮することが不可欠である。(持続可能な発展への転換をしよう)
確認問題
□check1
日本の二酸化硫黄(SO2)および一人当たり国内総生産(GDP)を調べて散布図グラフを作りなさい。そして経済成長とSO2による環境汚染の関係を説明しなさい。
□check2
二酸化炭素(CO2)に関しては環境クズネッツ曲線が成立しない原因を説明しなさい。
□check3
熱帯地域では熱帯林の破壊が深刻化しているが熱帯地域の人々の経済水準が上昇すると熱帯林は回復するか、それとも熱帯林破壊は続くだろうか。
check1から見ていくこととしよう。
check1,2に関しては「SO2」「CO2」「GDP」のデータを政府が出している統計よりとってきた。まとまったデータを求めたことにより2000年以後のグラフになってしまったが。
【グラフ1】日本のSO2排出量および一人当たりGDPの散布図グラフ
▼縦軸:SO2排出量(単位:千万トン)、横軸:一人当たりGDP(単位:千円)
弱い正の相関関係を確かめることが出来る。また推移グラフにもしてみた。
【グラフ2】日本のSO2排出量および一人当たりGDPの推移グラフ
▼左軸:SO2排出量(単位:千万トン)、右軸:一人当たりGDP(単位:千円)
近年一人当たりGDPが減少すると共にSO2排出量も減少してきている。
よって経済成長にともないSO2による環境汚染は悪化する。」
と思いきや!答えには逆の説明が!
「経済成長に伴いSO2排出量は減少する」
2000年以降のデータだけでは不十分であったのであろう、次回から十分にデータを集めてくることにしよう。(マクロな観点が私には足りていなかった)
環境情報科学学術研究論文集(2015)に、まさに答えというべき推移グラフが登場していた。SO2は多くの先進国で環境クズネッツ曲線が成立することが観察されている。
各地域の経済成長とSO2排出量の推移(1980 年の値を1とする)
経済成長と二酸化硫黄(SO2)排出量のデカップリング -エコロジー的近代化の視点から-升本 潔
次にcheck2である。
【グラフ3】日本のCO2排出量および一人当たりGDPの推移グラフ
▼左軸:CO2排出量(単位:千万トン)、右軸:一人当たりGDP(単位:千円)
【グラフ4】世界の一人当たりCO2排出量と一人当たりGDPの散布図グラフ(2005)
結果的に正の相関関係はあり、解説にもCO2はSO2と異なり経済が成長しても現時点では排出量は低下しておらず、環境クズネッツ曲線は成立しないとされている。が原因に関しては言及されていない。
?CO2で環境クズネッツ曲線が成立しない理由は
最後にcheck3である。
まず熱帯地域で熱帯林の破壊が続いている理由を把握する。
世界資源研究所(WRI)は、森林破壊の最大の原因を商業伐採とし、鉱業開発、農地や牧草地への転換、過度な木材採取等がそれに続いていると報告している。
アブラヤシなどのプランテーションや、将来木材や紙原料として利用するために行なわれる産業植林のために森林が切り開かれることが多く、これらが森林破壊の大きな原因となっているケースもある。
森林が脅かされている原因(WRI The Last Frontier Forests )
- 伐採 72%
- 採鉱、道路等 38%
- 農地開発 20%
- 過度な木材採取 14%
- その他 13%
人々の経済水準が上昇すれば「モノからサービス」へのシフトが起こると考えられるため、商業伐採を目的とした森林破壊は減少するだろう。
というのが私の意見である。
?なぜ経済水準が産業構造の変化に繋がるか
一方、解説では
熱帯地域の国々で熱帯林を保護するための対策が十分に実行されるか否かによる。熱帯林を保護すると、農地開発が出来なくなるので本来ならば得られるはずの利益が失われることから、熱帯林を保護しようとすると地元住民が反対するかもしれない。熱帯地域の国々の平均所得水準が上昇したとしても都市地域と農村地域の所得格差が存在するならば、熱帯林の保護は難しいだろう。
とあり、曖昧な表現になっている。
今後出てきた問いを考え直していきたい。